契約書の電子化とは?概要やメリット、方法について解説
紙の契約書を電子化すると、業務効率化やコスト削減、リモートワークの実現につながります。契約書を電子化するには、どのような方法があるのでしょうか。
本記事では、契約書の電子化のメリットや電子化に向けた方法、電子契約を導入する際の注意点をわかりやすく解説します。
1、契約書の電子化とは
契約書の電子化とは、紙の契約書ではなく、電子データで作成した契約書によって契約を締結することを意味します。
紙の契約書を取り交わす場合、記名押印によって法的証拠力を担保しますが、契約書を電子化する場合は記名押印の代わりに電子署名(電子サイン)を使用することが一般的です。電子署名を用いて契約を締結することを「電子契約」と呼びます。
電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)などの法整備が進んだ結果、電子契約には書面契約と同等の法的証拠力が認められました。[注1]そのため、契約書の電子化に取り組む企業が近年増えつつあります。
たとえば、取引基本契約書、業務委託契約書、秘密保持契約書、雇用契約書、その他の請求書や注文書など、さまざまな書類を電子化することが可能です。
[注1]法務省「電子署名法の概要と認定制度について」
2、契約書の電子化のメリット
契約書を電子化するメリットは4つあります。
- 業務の効率化
- コスト削減
- 管理体制の強化
- リモートワークが可能
1. 業務の効率化
紙の契約書を作成する場合、契約書の印刷や製本、顧客への郵送など、さまざまな手間がかかります。以下は書面契約に付随する業務の一例です。
- 契約書の印刷
- 契約書の製本や袋とじ
- 契約書への記名押印
- 契約書の郵送・ポスト投函
- 締結済みの契約書の保管
- 契約書管理台帳への記入
2. コスト削減
書面契約を締結すると、さまざまなコストがかかります。たとえば、紙の契約書を印刷するためのインク代やコピー用紙代がかかるほか、契約書を郵送する場合は1通当たりの配送料も必要です。 書面契約を廃止すればこうしたコストを削減し、毎月の支出を減らすことができます。 また、契約書を電子化すれば、契約書に収入印紙を貼る必要がなくなります。収入印紙は、契約金額によっては数千円〜数万円単位の出費が必要です。 契約業務に関するコストが気になる場合は、契約書の電子化を検討してみましょう。
3. 管理体制の強化
契約書を電子化すれば、社内のコンプライアンスを強化することも可能です。契約書には、自社の機密情報や顧客の個人情報など、重要な情報が記載されています。
契約書の管理体制が不十分な場合、こうした情報が外部に流出したり、改ざんされたりして、大きな損害が発生する危険性があります。電子契約は、暗号化技術を用いた電子署名や文書の改ざん防止が可能なタイムスタンプなどの技術が使われており、安全性が高い契約方法です。また、電子データの一元管理により、契約書の紛失・盗難を未然に防止できます。
このように電子契約を導入すれば、契約書の管理体制を強化し、より安全に契約を締結することが可能です。
4. リモートワークが可能
リモートワークの課題のひとつが「ハンコ出社」です。契約書を電子化していない場合、記名押印のために担当者が出社する必要があり、リモートワークを導入するメリットが薄れてしまいます。
契約書を電子化すればシステム開発のノウハウを持つ企業や契約業務を在宅で行うことができるため、不要なハンコ出社を減らせます。
3、契約書を電子化する方法
契約書を電子化する場合、電子契約サービスを利用することが一般的です。システム開発のノウハウを持つ企業の場合は、自社で環境を整備する方法もあります。契約書を電子化する方法を2つ紹介します。
電子契約サービスを利用する
電子契約サービスとは、契約書の電子化や電子署名の付与など、電子契約に必要な機能が揃ったツールのことです。電子契約サービスには、契約当事者が電子署名に必要な電子証明書を自ら発行する「当事者署名型」と、第三者が提供する電子証明書をそのまま利用する「事業者署名型(立会人型)」の2種類があります。 手続きが簡単なため、現在は事業者署名型(立会人型)の電子契約サービスを利用する企業が一般的です。電子契約サービスによっては、既存の契約書をスキャンし、電子データ化する機能も利用できます
自社で環境を用意する
システム開発のノウハウを持つ企業や既存のサービスにはない機能を実装したい企業は、自社でツールを内製する選択肢もあります。 ただし、システム開発には多額の時間やコストがかかるため、契約書の電子化によるメリットと比較し、十分な費用対効果を得られるか検討しましょう。
4、契約書を電子化する際の注意点
契約書を電子化する際の注意点は以下の3点です。
- 電子化できない契約書類もある
- 取引先の理解を得る必要がある
- 契約締結時の業務フローの見直しが必要になる
1. 電子化できない契約書類もある
契約書によっては、電子データではなく、書面での交付が必要なものもあります。電子化できない契約書として、以下の例が挙げられます。
- 任意後見契約書
- 事業用定期借地契約書
- 農地賃貸借契約書
2. 取引先の理解を得る必要がある
取引先によっては、電子契約に対応しておらず、書面契約しか認めていないケースもあります。契約書の電子化を進める場合は、まず取引先の理解を得ることが大切です。 電子契約サービスによっては、相手がツールを導入していなくても、簡単な手続きで電子署名を付与できるものもあります。取引先の理解を得られるか不安な場合は、相手方の負担が少ないツールを導入しましょう
3. 契約締結時の業務フローの見直しが必要になる
書面契約から電子契約に切り替える場合、契約業務のあり方が大きく変わります。たとえば、記名押印の代わりに電子署名を使用するため、印章管理規程の見直しが必要です。 また、電子契約サービスを導入する場合は、ツールの操作方法や使用ルールを社員に共有しなければなりません。契約書の電子化によって変わることを洗い出し、電子契約に合わせた業務フローを作成しましょう
5、電子契約サービスを利用する
契約書の電子化とは、電子データで契約書を作成し、記名押印の代わりに電子署名によって契約を締結することを意味します。契約書を電子化すれば、業務効率化やコスト削減、コンプライアンスの強化やハンコ出社の廃止など、さまざまなメリットが得られます。 契約書の電子化に取り組む場合は、自社に合った電子契約サービスを導入しましょう。 ただし、契約書によっては法令上、電子化できないものもあります。また、取引先への説明や電子化に合わせた業務フローの見直しを実施し、社内の運用体制を整えることが大切です。