直営施設の契約情報をkintoneに集約、
一部の社内稟議やテナント手続きもオンライン化
(左から)株式会社京阪流通システムズ 総務部 松田 成美氏、総務部 馬場 和輝氏
導入のポイント
- 業務のDX化のためにkintoneによる契約書管理システムの構築を検討
- ワークフローシステム「X-point」や「LINE WORKS」との連携
- 今後、さまざまな日常業務をkintoneにシフトし、全社的にDX化
図:京阪流通システムズ様活用例
業務上もっとも重要な情報を見極め一元化、
DXを見据えた取り組みに
大阪、京都、滋賀を結ぶ京阪電車を中心とする京阪グループ。その中でも、株式会社京阪流通システムズは、「京阪シティモール」や「京阪モール」、「KUZUHA MALL(くずはモール)」、またJR京都駅そばの「京都タワーサンド」といった京阪沿線中心に、商業施設の運営管理を担っています。
今回、契約書管理システムの導入を検討いただいた背景には、膨大な契約書類を一元管理したいという希望がありました。
「テナントさまと締結する賃貸借契約は、直営7施設だけでもあわせて約800件にのぼります。定期建物賃貸借契約が主です。月に5~6件は契約満了にともなう解約と新規契約が発生しているような状況です。
施設の新規オープンやリニューアルをする際は、一度に100件以上のテナントとの契約手続きが発生することもあり、社内の情報共有を迅速に行うため、契約関連業務も含めてオンライン化したいと考えました」と語るのは、総務部 業務処理センター マネージャーの馬場 和輝さまです。
中でもテナントとの契約条件は、施設の収益管理に欠かせない情報です。契約者や賃料条件、契約期間といった情報を「レントロール」と呼ばれる賃貸借条件の一覧表に落としこみ、情報共有しています。
(レントロールのイメージ図)
「レントロールは、たとえば新たなテナントさまの誘致条件の検討に参照しますし、すでに入居しているテナントさまが別施設に出店される際などにも、既存の契約内容を把握するため参照します。
このように重要なデータでありながら、以前は各施設ごとにExcel(※1)で管理していたのが課題でした。物件担当が手入力で更新していたものをオンライン化したかったのです」と馬場さま。
しかし、契約書管理システムの導入には、ほかに真の目的があったといいます。
「契約情報の一元管理を起点として全社的な『DX』、つまりは、デジタル活用による業務変革につなげなければ、と思っていました。ITシステムを導入するだけでは、アナログなツールがITに置き換わっただけの『デジタル化』で終わってしまう心配があるためです。
弊社では、ITや法務の機能も総務部が担っています。私たちが業務のDX化を進めるためにも、アプリケーションを自社開発できるようになりたい、と思いました。
そこで考え至ったのが、kintone(※2)の活用です。kintoneならプログラミング作業なしで業務管理アプリをつくれますから、私たちでも一連の仕組みを構築できるはず。そうした背景から、kintoneによる契約書管理システムの構築を検討しました」。
さらにDXを考える上では、テナント従業員のES向上も重要なテーマでした。本プロジェクトにおいて現場の社員やテナントとのやり取りを担った総務部のリーダー 松田成美さまは、次のように語ります。
「 実は、工事をするときの届出書や、店舗で働くスタッフさまの登録書、残業の申請書など……申請書類は多い現場で20種類以上になります。申請があるたびに記入して管理事務所に届けてもらい、弊社内で複数回の承認を経ていましたが、こうした手続きもオンライン化を目指しました」。
2020年末、新明和ソフトテクノロジが主催する契約書管理 on kintone活用セミナーに参加いただいたことをきっかけに、契約書管理システムの導入検討が本格的に進みます。1年半ほどをかけ、2022年2月には一連のワークフローとシステムが完成。テスト期間を経て、2022年秋より契約書管理 on kintoneが本格的に稼働するに至りました。
※1)Excelは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
※2)kintoneは、サイボウズ株式会社の登録商標または商標です。
業態にあわせたシステム構築のため
伴走支援が決め手に
検討を重ねる中、数ある協力会社の中から新明和ソフトテクノロジを選ばれた理由について、馬場さまは次のように語ります。
「決め手は、弊社の業態にあわせてカスタマイズを行ってもらえたことです。商業施設の運営業務に特化した製品はなかなかないためです。
弊社の賃料収入は、テナントさまの売り上げに連動した歩合賃料の割合がほとんどです。日常業務に欠かせないレントロールの出力機能も必須です。そうした自社向けのカスタマイズを重ねると、構築費用が高額になりすぎてしまうので悩んでいました。
そんな個別事情も新明和ソフトテクノロジさんはくみ取って、kintone上で柔軟に機能を追加してくださることに。弊社が契約書管理システムの導入を決められたのは、新明和ソフトテクノロジさんのきめ細やかな対応のお陰といっても過言ではありません」。
契約書管理 on kintoneを導入してみて、現在の使用状況はいかがでしょうか?馬場さまは、次のように語ります。
「直営7施設、約800の契約書をkintoneで一元管理できました。さらにはワークフロー構築システムのX-point(エクスポイント ※3)をkintoneに連携したことで、契約書類のリーガルチェックや締結業務もオンライン上で稟申できるようになりました。
テナントさまのマスター情報(所在地や代表者名など)や契約条件の変更も、kintoneで手続きが可能に。契約書上の情報はレントロールにも反映されるので 、転記作業がなくなり社内業務が一気に効率化されました」
本プロジェクトで技術を担当した新明和ソフトテクノロジのシステムマネジメント部 田中宏幸は、ワークフローを構築するにあたり、さまざまなITツールの連携を提案しました。
「X-pointのほかLINE WORKS(※4)とのシステム連携も田中さんからご提案いただき、新たに導入したものです。テナントさまの契約満了までの残存期日や稟申の進捗状況といった情報が、LINEで関係社員に届きます。
テナントさまの申請手続きも、LINEを通じて行えるようになりました。弊社側の承認手続きもオンライン上で完結。一連のワークフローをキレイに整備できました」と松田さまは、安心の表情を見せてくださいました。
続けて馬場さまより、新明和ソフトテクノロジがプロジェクト推進において、伴走支援の形を取っている点についてご好評をいただきました。
「ITシステムを自社構築するのは今回がはじめての経験で、取り組みはじめたころは専門用語や概念が分からず苦労しました。さらには今回、商談開始から構築、導入、稼働スタートまで、すべての作業をオンラインで行うことに……。コロナ禍でのやむを得ない判断でしたが、当初は心配でしたね。そんな中、2週間に1回の頻度で打合せを行い、社内から寄せられる課題に向き合いながら一緒にシステムの構成や要件を考えていただいたのは、とても助かりました。そうした伴走支援がなければ、現場の要望に対して『できない』と返答するしかなかったと思います」。
※3)X-pointは、株式会社エイトレッドの登録商標または商標です。
※4)LINEおよびLINE WORKSは、LINE 株式会社およびWorks Mobile Corporation の商標または登録商標です。
DXにより組織カルチャーも前向きに、今後にも期待
契約書管理 on kintoneは、いまや全社で約100名の社員さまが使用しているとのこと。ユーザーのみなさまからは、どのような感想が寄せられているでしょうか?
「営業担当からは、ネクストアクションが取りやすくなったと言われます。LINEで契約満了日までの残存期間が通知されるので、テナント誘致のタイミングが計りやすくなったためです。
テナントさまからは、申請手続きのために現場を離れる必要がなくなり、店舗での接客に集中できるようになった、とお喜びの声をいただいており、うれしい成果でした」と、松田さまからご感想が。
続けて松田さまは、DXの波及効果にも触れてくださいました。
「契約条件や稟申状況が関係者の間でオープンに共有されたことで、現場のスタッフレベルで主体性が発揮されるようになったと感じます。『こういう契約条件だから、こういった業務をしよう』『こうした提案をしてみよう』と、各自がレントロールを見ながら創造的に考え、行動できるようになったのです。
kintoneを活用することで、より主体的な施設運営を促せる自信が得られましたし、総務部でも、次はテナントさまに貸し出す端末の管理をkintone上で行っていきたいと前向きに検討しています」。
テナントさまと社員さま、管理部門と、まさに三方よしのDXが叶いました。今後の展望について松田さまは、DXに対する意気込みを教えてくださいます。
「真のDXとは、間接業務の効率化や業務変革の意欲を育むなど、組織カルチャーを変えていくことだと考えています。
契約書管理 on kintoneも、『関係者に寄り添ったシステムにすること』を念頭に置いて構築を進めてきました。社員の満足度向上やテナントさまからの信頼性向上などをゴールに見据えながら、今後はより全社的なDXも進めていけたらと思います」
馬場さまも「全社的なDXはまだまだこれから」と決意を新たにします。
「DXに取り組む意義を社内にどれだけ浸透できるか……。全社的なDXの実現にとって、実はこれが一番大きなハードルかもしれません。このハードルを乗り越えるために、社員にとって身近な物事からオンライン化を進めてきました。
そうした意味で、社員が日常的に触れている『契約情報』を起点にオンライン化を進めたことは、DXに向けた大事な一歩となったと感じています。今後は、いかにさまざまな日常業務をkintoneにシフトしていけるかがポイントとなるでしょう。
引き続き新明和ソフトテクノロジさんにご協力いただいて、全社的なDXを進めていけたらと思います」
自社の業務上でもっとも重要な情報を見極め一元化し、DXを叶えたことは、本事例の特筆点といえるでしょう。社内にIT部門がない、DXを見据えたシステム導入を図りたい……そんなお悩みをお持ちの企業さまにとって、参考になるお話が伺えました。